はじめに
2026年6月20日に開催された、新潟のWeb制作者コミュニティ「新潟グラム」の勉強会「静的HTMLを先に作る制作のままでいいの?CMSサイト構築フローを考える」に参加してきました!
「まず静的なHTMLを作ってから、あとでWordPressなどのCMSに組み込む」——Web制作の現場では当たり前のように使われてきたこの流れ。でも、ブロックエディタの普及やAIの登場で、その“当たり前”が今まさに問い直されています。
この記事では、当日の5つのセッションで語られた内容を、「結局これからのCMS構築ってどう考えればいいの?」という視点で、できるだけかみ砕いてレポートします。
WordPressをはじめCMSでサイトを作る方、これから制作フローを見直したい方の参考になればうれしいです。
💡 そもそもCMSとは「Contents Management System(コンテンツ管理システム)」の略。
HTMLを直接書かなくても、管理画面からお知らせやブログを更新できる仕組みのことです。WordPressが代表例ですね。
① WordPressの「page-*.php論争」とは?何が問題なのか(長谷川広武さん)
最初のセッションは、WordPressの開発者の間で話題になっている「page-*.php論争」のお話でした。
page-*.php というのは、WordPressで「特定の固定ページ専用のテンプレート」を作るときのファイルです。
従来はこのPHPファイルにHTMLを書き込んでデザインを作っていました。
でも今のWordPressにはブロックエディタ(管理画面上でパーツを積み木のように並べて編集する仕組み)やフルサイト編集という新しい作り方があり、昔ながらの page-*.php に頼ったままだと、その新機能を活かしきれないという問題提起でした。
加えて、WordPressはメンテナンスコストがかかるという指摘も。
プラグインのアップデートやセキュリティ対策をきちんと続けられるかどうかが、長く運用するうえで効いてきます。
そのうえで一番刺さったのが、この一言でした。
「何で作るかではなく、誰のために作るか」
ツールの新旧で正解が決まるのではなく、最終的にそのサイトを更新する人・使う人にとってベストかどうかで選ぼう、という原点に立ち返る話で、このあとのセッション全体の通奏低音になっていたように思います。
② デザインの自由を奪うのはCMSじゃない(西山泰史さん)
2つ目は、Movable Type(WordPress以外の代表的なCMSのひとつ)を使っている立場からのお話。
「page.-*php論争ってWordPressだけの話?」というと、実はMovable Typeでも同じようなことが起きているそうです。
西山さんが本質として挙げていたのは、「デザインとCMS設計が分離されていないこと」が問題なのだ、という点でした。
Movable Typeはセキュリティに優れていることから導入が増えていて、MTML(Movable Type専用のテンプレート言語)を使います。
ヘッダーなど使い回す部分はMTMLで組み、コンテンツ部分はブロックエディタで作るという分担が主流になっているとのこと。
そして「ブロックエディタって自由度が低いんじゃない?」というよくある誤解への切り返しが見事でした。
- ブロックエディタは「コンテンツを入れる箱」を用意し、その「箱をデザインする」もの
- つまり制限ではなく、設計思考の言語化・デザインの“統制”である
- 狙いは「誰が触っても同じように作れること」
「自由にデザインできることが正義」と思い込みがちですが、発想を逆転させると、ブロックエディタの“制約”はむしろ品質を守る仕組みなんですね。
参考事例として小樽市社会福祉協議会や国立大学法人等の採用サイトが紹介されていました。
🎯 締めの「Web制作会社は Filter(ふるい)ではなく Amplifier(増幅器) になる」という言葉も印象的でした。
お客さんの可能性を“絞る”のではなく“増幅する”存在へ、という制作スタンスの話です。
③ 静的HTML制作を活かす、Craft CMSという選択肢(國分亨さん)
3つ目は、日本ではまだ知る人ぞ知るCraft CMSという選択肢の紹介でした。
Craft CMSには既成のテーマがありません。
ゼロから作る必要があるので最初は大変ですが、その分「どこまで更新できるようにするかを自由に選べる」のが最大の強みだそうです。
具体的には、こんな使い分けができます。
- 更新頻度の低い部分(ヘッダーなど)は静的なHTMLのまま
- 更新頻度の高い部分(お知らせなど)はCMSと連携
必要な情報の粒度を細かく設定でき、データ構造と入力画面をきっちり設計できる作り。標準で27種類のフィールドがあり、プラグインでさらに増やせます。
「特定のユーザーだけ」「特定の条件のときだけ」表示を変える、といった細かい制御も可能とのこと。
「CMSはコンテンツを管理するためのもの」という原則に忠実な設計だなと感じました。
今年からはLaravel(PHPのフレームワーク)ベースに移行しつつあり、これまでの書き方も互換パッケージでそのまま使えるそうです。
④ AIで開発を前倒しする、CMSサイト構築ワークフロー(柳谷真志さん)
4つ目は、今いちばん気になるテーマAIをCMS構築の現場にどう組み込むかのお話でした。
基本の流れはとてもシンプルです。
- 人が要件・設計書・会議メモなどの情報を集める
- AIがそれを分析して、たたき台を作る
- 人が確認・調整する
ポイントは、AIに渡すための整理として「AI用」と「人用」で案件定義のディレクトリを分けること。
クライアントに安心してもらうためにも、人が読むためのドキュメントはちゃんと用意したほうがいい、という現場感のあるアドバイスでした。
従来のやり方だと「動くものがあると確認しやすい」反面、手間のかかる設計が後工程に送られがちで、実装後に想定外の手戻りが発生しやすい。
そこをAIで「短く・広く」進めることで、ウォーターフォール型の進行でも確認のループを短く深く回せるようになる、と。
AIがプロトタイプ(たたき台)を作り、それを見ながら要件定義を固めていく。
要件定義のフェーズで早めに確認できるから、手戻りが減るというわけです。
✅ まとめの「AIで短いフィードバックを回すことで、解像度が一段上がる」という言葉、実際にAIを使って制作している身として深くうなずきました。
⑤ 静的HTMLを先に作る制作フローはまだ正解か?(長谷川広武さん)
最後は再び長谷川さんが登壇し、テーマの核心「静的HTML先行の制作フローは、今でも正解か?」に切り込みました。
まず大前提として「WordPressを使うならブロックエディタ前提で! 特にコンテンツを入れる部分は!」というメッセージ。
そのうえで、「静的HTML→WordPress」という従来フローを肯定する理由を一度フラットに並べてくれました。
- 目的に合っていて、慣れているから
- コスト面で見合うから
- デザインを担保できるから
- 編集できる範囲を制限できるから
- 要件への柔軟性があるから
でも、ここで鋭い問いが投げかけられます。
「それ、WordPressじゃなくてもよくない?」と。
そこでおすすめとして挙がったのが a-blog cms。
静的HTMLを活かす制作フローと相性が良いCMSで、こんな特徴があります。
- 作った静的HTMLをそのままディレクトリに置ける(これが最大のメリット!)
- 変更したい部分だけをピンポイントで変更できる
- コメント形式でもTwig形式でも書ける
- セキュリティリスクが低め
「静的を活かすなら、カスタムフィールドが簡単に使えて、ページが重くなりにくく、テンプレートに変換しやすいCMSを選ぶべき」という指針も。
選択肢としてはWordPress以外に a-blog cms / Movable Type / Craft CMS / Headless CMS / EmDash などが挙げられ、加えてAstro(モダンな静的サイト構築ツール)も勉強する価値あり、とのことでした。
💡 Headless CMSとは、「コンテンツの管理」と「見た目の表示」を切り離したCMSのこと。表示側を自由に作れるので、静的サイトやアプリとも組み合わせやすいのが特徴です。
そして締めくくりはやはりAIの話。
今後の制作者の立ち位置として、こんな予想が語られました。
- AIを“相棒”にする。メインのコーディングはAIが担い、人は確認と調整に回る
- 制作者はAIに指示を出すディレクターになっていく
- これからは、AIがコーディングデータを作れるCMSや、MCP(AIと外部ツールをつなぐ仕組み)の活用、さらにはCMS自体にAIが組み込まれる流れが来る
デモでは、ローカルでWordPressの表示を手軽に確認できる「WordPress Studio」も紹介されていました(データベースにSQLiteを使っていて、テーマの確認用にとても便利だそうです)。
参加してみて感じたこと
5つのセッションを通して、共通していたメッセージはこの2つだったと思います。
- 「何で作るか」より「誰のために作るか」。ツール選びは目的とお客さんありき。
- AIは仕事を奪う敵ではなく、相棒。コーディングを任せて、人はより上流(設計・確認・ディレクション)に集中する時代へ。
「静的HTML先行のフローはもう古いのか?」という問いへの答えは、「なくならないけれど、考え方はアップデートが必要」。
ブロックエディタやa-blog cms、Craft CMSのように“静的の良さ”を活かしながらCMSの強みも取り込む選択肢が、これからますます重要になりそうだと感じました。
私自身、普段はWordPressで集客サイトを作ることが多いのですが、「ブロックエディタを制限ではなく設計の言語ととらえる」という視点は、明日からの制作にすぐ活かせそうです。
学びの多い夜でした!
まとめ
今回の新潟グラムで学んだことを、最後にぎゅっと振り返ります👇
- WordPressはブロックエディタ前提で考える時代。
page-*.php頼みは見直しどき - ブロックエディタの“制約”は、誰が触っても同じ品質で作れるための設計思考
- 静的HTMLを活かすなら、a-blog cmsやCraft CMSといった選択肢も有力
- AIを使うと要件定義の段階で確認でき、手戻りが減る
- これからの制作者はAIに指示を出すディレクターへ。Astroなど新しい技術も学ぶ価値あり
「何で作るか」だけにとらわれず、「誰のために、どう作るか」を考え続けたいですね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
「自社のホームページ、更新しやすくて集客にもつながる形に作り直したいな」とお考えの方へ。私は現役のフロントエンドエンジニアとして、WordPressでの集客サイト制作をお手伝いしています。ご興味があれば ポートフォリオ や ココナラの出品ページ ものぞいてみてくださいね。

